平成21年度厚生労働科学研究
「医療機関での職員間情報伝達を改善するための、プレゼンス情報生成手法に関する研究」

研究代表者 山野辺裕二(国立成育医療研究センター病院 医療情報室長)


What is New

2017/05/28 ITヘルスケア学会第11回学術大会で「業務中断や注意散漫を避けつつケアスタッフに情報伝達する手段としての音楽・音声の応用」を発表しました。

2010/12/08 第30回医療情報学連合大会での発表、臨床データ・システムログ記録情報の活用によるスタッフの動態検知(PDF 1.4MB)を掲載しました。

2009/10/09 公開シンポジウムの講師を掲載しました。
2009/09/10 公開シンポジウム「医療機関でのユニファイド・コミュニケーションを考える」のページをプレオープンしました。

研究の趣旨

 医療機関での医療事故やヒヤリハット事例の報告のなかには、発生要因として医師や看護師など医療職間の連携ミスや業務中断を挙げているものがあります。報告事例中の一定の部分を占めていますが、この部分の改善の決め手は見つかっていません。

 一方で病院内では、職員個人に構内PHSを持たせるなど、医療者個人に容易に連絡がつくような仕組みが整備されつつあります。国立成育医療センターでも、医師等のPHSへの呼び出しで業務が中断するという報告を受けています。情報技術(IT)を用いてこの問題の解決を図り、医療従事者間で安全・確実に情報伝達できる方法を開発して医療安全の向上に寄与するのが当研究の目的です。

 世の中では、ユニファイド・コミュニケーション(Unified Communication)という概念が生まれ、一般企業等で利用され始めています。音声・インスタントメッセージ・電子メール・FAXなど複数の通信手段を適切に組み合わせて相手に連絡するという手法です。このUCで重要になってくるのが、プレゼンス(通信相手の都合)という概念です。たとえば、次のような状態があります。このプレゼンスに応じて、送信側は電話(留守録)にするか、チャットにするか、メールにするかを選べるわけです。

 現在これらのプレゼンスは、パソコンの利用や、グループウェアのスケジュール、電話の状態などから生成しています。しかし、医療機関では就業形態が一般企業とは異なり、医療者が自分のデスクにいることは稀なので、次のようなプレゼンスが求められます。

 これらのプレゼンス情報は、グループウェアのみでは生成できません。まず考えられるのは、医療者にモバイル端末を持たせて、手動でプレゼンスを切り替えることですが、医療現場でそれが定着するかどうかは疑問です。そのため、それに加えてRFIDや無線LANの位置情報、端末のモーションセンサーからの情報を統合して、モバイル端末がどこにあるか、移動中か、充電中か、といった情報をプレゼンス情報の生成源とすることが考えられます。しかし実用的なコストで導入できる技術であることも重要です。当研究では、まず医療機関内でのプレゼンスの生成手法について研究を進める予定です。

 プレゼンス以外にも、医療機関でユニファイド・コミュニケーションを役立てるには様々な課題を乗り越える必要があります。インフラの面でも、医療機関内では携帯電話が使いにくいという問題があります。現在では病院内の内線通話にPHSを用いていることが多いですが、できれば電波インフラを無線LANに統一し、その上でVoIPを使うのが理想だと考えます。

 医療機関内でのリアルタイムコミュニケーションを改善していくと、ナースコールの一部機能も統合できるでしょう。更には救急応需情報、在宅医療への対応における連絡手段も統合できるかもしれません。このように、私たちは医療機関内外での職員や患者間のコミュニケーションの改善を視野に入れ、さまざまな研究の礎を築いていきたいと考えています。

イベント

2009/12/02 公開シンポジウム「医療機関でのユニファイド・コミュニケーションを考える」

 

2009/10/02 平成21年度第1回研究班会議 (関係者限定)

2009/11/24 平成21年度第2回研究班会議 (関係者限定)

2009/12/04 平成21年度第3回研究班会議 (関係者限定)

2010/07/30 平成22年度第1回研究班会議(関係者限定)

2010/11/20 平成22年度第2回研究班会議(関係者限定)


参考リンク(Blog) 

「実空間拡張型プレゼンス」 by KDDI研究所

妊婦たらい回し防止にプレゼンス情報?

コンシューマー向け携帯電話プレゼンスサービス

医療分野でのユニファイド・コミュニケーションの可能性


2009/08/16 サイトをオープン
更新 2017年05月29日